雨粒が耳にあける穴にたまる
あぐり





滲んできた雨が
ぽつりと靴に刺さる白い真昼
耳の寂しいわたしは
(あぁ ピアスがほしい)

なだらかな耳朶に
ひそやかな穴をあけてしまうことは
どうしようもなく哀しくて
正当な理由を忘れて昔、
ないがしろにしたからだを想えば
今はもう
やわいこの肌をだきしめなくちゃいけない

爪をたてて×印をつけては
このからだに相応しい言葉が滲まない回数を刻んでいる
冷たい雨だろう、外は
震えているんだろう、雲は
遠いきみを想っても
この耳の寂しさは流れていかないから
そういうことでつぐなうしかないんだとする
追いたてるように責めたてるように
増えてく雨粒の呟き
ひとつずつわたしを穿ち
そうして出来る穴の中にきみが生きていければ良いのにね
叶わないことを考えるのには厭きてしまった
優しいふりで傷付けることが得意なわたしは
自分のからだだけは優しい穴をあけられないんです

長々と降り続く水とわたしの言葉は
どちらの方が重くて、どちらの方が透き通っていて
どちらの方がきみの咽を潤せるだろう
きみにあけられた穴の中に
あいしてる という水滴をためつづけてる
あふれることはないんだ
そういうさみしさに耳がかじかんで、
ただもう今は
痛いさ





自由詩 雨粒が耳にあける穴にたまる Copyright あぐり 2009-11-02 20:53:13
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