時代
森の猫

もっと息子と向き合えよ
と 夫は言う

筋ジストロフィーの息子は
23才になった
もう 完全に大人の男だ

あの頃
あの6年弱は
わたしにとって格闘の時代だった

小6の担任から
中学からは 専門の養護学校に
入学させたほうがよいと薦められた

小5から車椅子の生活だった
養護学校の方が自由に生活できると

息子の為
養護学校のある市へと引っ越した

毎日のことである
まだ2才になる
末娘を抱えての送迎

引越しの心労から
欝の症状は悪化し

死にたいと
思う日が続いた

深夜 早朝
5階の東のベランダに出て
死への願望を口にする

わたしなんか
いらない
役に立たない
消え入りたい・・・

幼子と息子の介護が
この欝をなんとか
もちこたえさせた

シャワーもあびられない
食事も作れない
毎日の養護学校への送迎
息子の介護
末娘の世話

真ん中の長女には
気が回らず
引きこもりになる

そんな中でも
病院へ通い 薬を飲み
寝られるだけ寝て

体調の良いときは
一泊の外出をした

今 だから書ける6年の
濃密な時間

その間
夫はいたって普通に
会社勤めをこなした

何事も家で起こってないかのように・・・

夫に頼ることは思いつかなかった
わたしひとりが我慢すれば
なんとかなると思い込んでいた


わたしは詩を書き
朗読という希望を持ち
暮らしている

息子は要介護1級の障害者だが
明るい家族の中心だ

末娘はオタクの小6
長女も病院へ通い始めた

夫の言葉 ”向き合えよ”
わたしは 逃げているのだろうか

まだ 答えは出ない


自由詩 時代 Copyright 森の猫 2009-11-02 06:11:35
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