おくる花
かんな


天気の良い
朝方だったかしら
母が
庭の小さな一角に
ありがとうの種を
植えたのを見た

それから
気になってはこっそり
母を
見ていた
芽が出て
茎が伸びて
母の背丈を越える

水をやる時
何かをつぶやく
きっと
あの人に
またあの人に
ありがとう
そう言いながら
水をやっているんだろう
そう思った
すると
花が
咲きはじめた

一輪
また一輪
育ったありがとうを摘む
母の手が
きれいだった
きれいなラッピング
母らしく繊細な
小さな
メッセージカード

ある日
目がさめると
枕元に
ありがとうが一輪置いてある
部屋を出て
台所に行くと
祖母がありがとうを一輪
テーブルの中央に
飾っていた

父が
祖父が
次々とありがとうを持って
起きてきた
最後に
母が起きてきて
キレイに咲いていたのよ
そう言って
にっこりと微笑んだ



自由詩 おくる花 Copyright かんな 2009-11-01 18:15:08
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