滲みゆく月
中原 那由多

   踏切


仮に待たされたと考えて
横切っていく貨物列車の裏側には
「さよなら」さえも存在しない
元々は一方的に出来合いとして扱われていたのだから
どこにも間違いはないと言えるのだが


   撤去


老朽化したビルディングが
どんどん姿を変えていく
流行り廃りとゴーストタウン
一貫して何かを守り続けることを
幸い誰も責めようとはしない(まず人が見当たらない)


   黄砂


曖昧にして逃げていいのなら
正しい答えを探さないで欲しい
自分だけが特別だと思っていたこと
単なる思い上がりだと理解した瞬間が
想像以上に清々しかった


   反転


無意識についた嘘で
鍵を無くさないようにする代わりに
やり場のない痛みに頭を抱える
後ろから聞こえる笑い声は
娯楽としとも悪くはなかった




自由詩 滲みゆく月 Copyright 中原 那由多 2009-11-01 08:35:57
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