『冷熱』
あおい満月

冷えた氷の一片が
熱く手のひらを突き刺す
待つことを乞うように

力一杯握りしめると
氷の時間が止まる

氷のなかにあるものは霧と雲
そのなかにわたしの足跡はない

どんなに熱を残しても
氷の世界は沙漠の砂となり
記憶を消していく

跡形もないなみだのあとに
降れる雪は
何故か息をし鼓動する

雪がわたしを抱きしめる
この雪は知るだろうか

わたしの声を
わたしのことばを

この雪はわかるだろうか
一片の氷の刃を
冷たく溶かしてしまった

わたしの熱い哀しみを


                      2009.8.26(Wed)


自由詩 『冷熱』 Copyright あおい満月 2009-10-31 21:34:34
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