恩送り
木屋 亞万

急増する家庭間買収と吸収合併、渦巻く不安と家庭内格差!仕送りは恩送りへ
10月31日12時30分配信(木経新聞)

各家庭あたりの収入は年々減り続け、支出は増えるばかりだ。とりわけ子どもの教
育費と老人の医療費は経費削減が難しく家計を圧迫している。このような事態を受
けて昨今の都市部では家族間の買収や吸収合併が相次いでいる。いわゆるM&Aは企
業の枠を超え、経営不振の家庭に対しても行われるようになってきている。
ひとつの例を見てみよう。西京都手立区に住む田中家、山下家、斉藤家はウエスト
ウッド・ファミリーとのM&Aを経て、ウエストウッド・ホールディングスに属する
こととなった。斉藤家の家長はウエストウッド・ファミリーの参謀となったが、田
中・山下両家の家長は家庭取締役の任を解かれ、わずかな退職金とともに家庭を去
ることとなり、田中・山下両夫婦は現在別居状態に陥っている。田中家、斉藤家の
夫人はウエストウッド家の秘書課に配属され、山下家の夫人は家事庶務課の課長と
されることとなった。田中家長男は大学を卒業しこの春に独立、同家長女は高校を
卒業後に秘書課へ、斉藤家の長男と次男は共に都内の国立大学へ進学している。ウ
エストウッド・ホールディングスでは仕送り制度の代替策として恩送り制度が導入
された(恩送り制度については詳しく後述する)。山下家に子はないが介護認定を受
けている山下夫人の母親に関する事業の一切をウエストウッド・ファミリーへと委
託した。
家族間での買収や合併が相次ぐ中で仕送りという仕組みが見直され、子家族に属す
る就学児童生徒に親家族から行われる学費・生活費の負担を、原則的に給付とされ
ていた仕送りから、無利子で貸与する恩送りに変更される例が多く見られるように
なってきている。恩を送られた者は金品またはそれに変わるものによって奉公せ
ねばならず、先ほどのウエストウッド・ファミリーによる恩送りでは田中家の長女
が高校学費のご恩に対して、ウエストウッド家長との肉体関係を奉公として求めら
れたという。その後、田中家の長女は大学に進学することをあきらめ家事手伝い兼
秘書としてウエストウッド・ファミリーに在籍している。現在彼女は家長の子を身
ごもっており来春に出産する予定だ。斉藤家の二人の息子は、アルバイトの給料の
中から毎月5万円を奉公し、8万円の恩送りを得ている。不足分は卒業後に働いたお
金で返還することになっているという。
不景気になると富裕層と貧困層の経済格差がしばしば取沙汰されてきたが、家庭間
の合併が行われるようになった現在において、富裕層が貧困層を吸収する形で大家
族化し始めている事態についても等しく論じていく必要があるだろう。先ほどのウ
エストウッド家のように外資が積極的に参入してくる事例も報告され始めており、
その一方で国内の大家族が海外進出することによる国内の家庭の空洞化も問題にな
り始めている。さらに強引な合併や買収を受けて、家族関係が分断されることも深
刻な社会問題となってきており、家庭を取り巻く環境は近年急速に変化してきてい
る。
家庭買収や合併といえば、富裕層の大家族同士の問題だと思われがちだが、昨年行
われたM&Aの80%は中小家庭が関わっているものである。合併前の家族間の経済格
差が合併後の家族内の力関係を左右し、貧困層の家族にさまざまな悪条件が突きつ
けられている例も多数報告されている。深刻な被害にあった家族が訴訟を起こすと
いう事例も複数見られるようになってきてはいるが、現在の法律では何らかの処罰
を与えるのは難しい状況にある。また家庭から切り捨てられてしまった元家長に関
しても、セーフティネットが機能していないのが現状だ。
核家族から大家族を創出する形へ移行し始めた現在社会において、家庭外格差と家
庭内格差の問題をどのように論じ、いかなる施策を展開していくかということが今
期の国会での焦点となりそうだ。(文責:木屋亞万次郎)


自由詩 恩送り Copyright 木屋 亞万 2009-10-31 12:46:27
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