夢日記〔未完〕
馬野ミキ

薄着で
あるいは紙袋を被って青光りするのチェインメイルを装着しているであるとか
わらじを履いたTシャツにノーパンのスラブ系の少女
個々が
思い思いの個性とファッションを楽しむというよりは
ただ気が向いたからそうしているというように
説明や証明が必要なく
抱擁とユーモア、やさしさと新しいアイディアが常に溢れた



お金は
ポケットに入れる者もいたし地面に置いている人たちもいたし草むらに隠している者もいたし
空中を浮遊している場合もあった
兎に角皆
自分が何を持っているかということについて
無頓着だったし
何より所持することや
執着することを忘れてしまうほどの
抱擁とユーモア、やさしさと新しいアイディアが常に溢れている



告白とは
恥ずかしいものである
だがそれが事実であるのなら
それはすべて受け入れられた
本当に起こったことを無視するということのほうが悲しいことだ
孤独は打って変わって誰かのユーモアに慰められた
全員で笑って
もう何もかもを忘れてしまうやり方である





直感とは
総合的な力である
直感の積み重ねにより奇跡的なことは起こりえた
直感が総合的であるのなら
一人の人間も総合的でなければならないだろう




そこでは
昨日まで踊りを知らなかった者でも踊りの教師になれた
なぜなら踊りとは簡単に言うと体を動かすだけだからだ
確かにその子にも才能があったのだ
だが才能なんて本当はありふれたものだ
回路が通じ
条件が整えば誰にでもそういうことを起こり得る



自分が
そういうところに生きているということが分かった時には
一瞬に大量の涙が出てしまう
そうして
ああみんなもそうだったのかと思い出してしまう
それからもう君は
どこへでも出かけられる勇気を持った
でもここは特別にいい場所なんだよ




たいていのことは
そんなに重要な事柄ではなくって
ただ何もかもが軽快に進むのは
直感と反応する宇宙との差が縮まっているからである
戦争ごっこも本気で全力だから10秒で終わる
ほとんど死者は出ない






プレゼントだと言って
息を吹きかけたり
自分が流した涙を飲ませようとしたり
そこらにあった草をむしることは
無邪気で愛らしいことだ
そういう軽さが
逆に
年をとることや
時間という概念を打ち消すのだ
それこそ祝福だ
そういうものが
時間だとか重力だとかいう一種の権威と
対等に成りえたとき
永遠という概念が
銀河宇宙のどっかに形成される




テレビが輸入された時には
100人が全員でテレビにかじりついたが
一週間で飽きて
もう誰もテレビを見なくなった
電気をひいて維持することは重労働であるし
テレビで起きることよりも
それぞれの脳内で起きることのほうが刺激的だったから
夢を次の日に現実にできる喜び



誰もが
自分の興味を持っている子に手をひっぱられて
夜の草原に連れ出される
そこに指示や思惑はない
客観性もない
君は空気がどうしたものでできているかということを理解するが
そんなことをノートにメモしている暇はない
だから美しい
常に留めようとするものより良いものが
あなたに与えられる





対話や議論に
証明や説明やソースを必要としない
俺たちはそこまで落ちぶれていない





女の子たちは
髪の毛の手入れにこだわった
かたちや長さについて
そういう時間は毎日一時間あった
それからどの子も足の裏や肘やひざがきれいだ
でもあちこちに泥や土や砂がついているのには無頓着で
それは男の子たちも同じだったけれど
すべてのほくろは
結ぶと星座のかたちになって
夜更けには二人でそれをつつくのだ




歌や詩やアートのようなものは存在したが
それらは作品という概念では捉えられなかった
録音をしたり
後世に残そうという以前に
世界中にその生のままで浸透するからである
それらは契約やジャンルや印税以前に
生きる養分として分け与えられる




食べ物は食べても食べなくてもよいものだった
ただ、食べるということは強く流行した
これはある種の趣向だ
グルメとはある種の変態ではないか?




どこかに出かけてしまうことはとても大切なことだ
どんなに遠くへ出かけても人は一人ではありえない
どんなに孤独な人間にも無名の星がまたたいたよ



自由詩 夢日記〔未完〕 Copyright 馬野ミキ 2009-10-31 02:30:31
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