ムンバイにて
都志雄

インドでの最後の日
褐色の海に
トビウオが跳ねる。
海底油田の採掘船の間をすりぬけて。

少女たちが物乞いをしている。
海を背にして。
彼女たちは自営業者なのか、と私は考える。
それとも甘苦い復讐なのだろうか、と。

インドでの最後の日
褐色の海に
トビウオが跳ねる。
天国に上るために、地獄に落ちるために。

父と息子が、立ち尽くす。
海を前にして。
二人はいつまでそこに立っているのか、と私は考える。
たとえ雲間から太陽が顔を出し、二人の額から汗が滝のように噴き出してもそこに立ち尽くすのか

インドでの最後の日
褐色の海に
トビウオが跳ねる。
太陽が顔を出し、私は日陰へと入る。
少女たちはさまよい、父子は立ち尽くす。

天国にも、地獄にも、手が届きそうなこの海辺で


天国にも、地獄にも、手が届きそうなこの海辺で


天国にも、

地獄にも、

手が届きそうな、

この海辺で




自由詩 ムンバイにて Copyright 都志雄 2009-10-31 01:18:14
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