マイ・バック・ページズーさよなら神様ー
……とある蛙

その日、僕は仕事を置き去りにして
青山墓地に向かった。
そして、
その日、僕の何かが壊れた。

さよなら神様
神様は本当に死んでしまったのだ。

五歳の僕は
毎月現れる本屋から
月刊の少年誌
たくさん付録の付いた雑誌
鉄腕アトムもいたし、鉄人も
独りぽっちの僕にとって
一冊の雑誌
一編の漫画
が空想世界のすべてだった。

月一度の本屋の配達が
どれだけ僕を幸せにしてくれたか。

七歳の僕は少年週刊誌を回し読み
そのとき神様はもう神様だった
しかし、神が作った者は先を行っていて
どろろ 三つ目 が始まったが
世間の見方はあいもかわらず鉄腕アトム
僕はあなたのマンガのかき方を読み
本気で漫画家になろうと思っていた。

しかも
クラスには漫画を描くかわいい子がいて
僕は夢中だった
でも彼女は転校してしまった>連絡なしに
それでも僕は漫画に夢中だった。

中学生の時に
神の教え子がマンガ家入門を描き
肉筆同人誌を回覧していた。
が ほどなく霧散した。
僕は意味もなく漫画に飽きた。

高校生の時にはもう漫画を描かなくなって
僕は翼を失った。
神になる道は閉ざされ、

しかし、代りに音楽とマルクスとが
生活のすべてになり、
僕が夢中になった女の子は
近所の普通の子だ。

僕はもう漫画家になろうとは思わなかった。
毎日ギターを弾きながら
知りもしない人生を、社会を唄っていた。
適当に不良と付き合い ぐずぐずしていた。

ちゃっかり浪人もせずに
大学生になった僕は
ありとあらゆる本を読んだ
結局公務員にもなれたのに
ぶらぶら勉強していて
そのあげくに今の仕事だ

独立してしばらくして
元号が変わった寒い日
あなたの死を知った。
僕はその時何かが壊れてしまった。

さよなら神様
僕は一杯のウイスキーをあなたに捧げ
したたか一人で酔い潰れながら
独り言をぶつぶつ呟いた。
そうさ、それはすべてあなたの生きていた時のことばかりだ、
気分だけでとても幸せな時の一人話だ。


あれから二〇年相変わらず僕は
自分を騙しながら同じ仕事を続けている。
だが、少しづつ
自分のやりたいことを思い出しながら、変わってゆくだろう。
これからは。


自由詩 マイ・バック・ページズーさよなら神様ー Copyright ……とある蛙 2009-10-30 09:43:41
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