想像妊娠中絶
古月
薄ら陰りの昼の日中に
雨漏り仏間の饐えた臭い
ぼんやり光る障子紙の
柔いざらざらに舌を宛てがい
斜交いに這わす舌先吐息は
さて什んな味がするのやら
迂腐な未通女の染めたる頬より
猶お赤い赤い赤いのは
やけに真白き売女の足の
其処彼処から滴る甘露だ
白目をでんぐり返した木偶の
蕾の赤い赤い赤いのは
五体を巡る真赤い其れが
破裂んばかりに凝れる所為だ
胎蔵界に虚空蔵が有るなら
女の胎には宇宙が有ろうか
虚空蔵が胎蔵界に有るなら
脳の孕まぬ道理が有ろうか
為らば片恋う何処ぞの何方の
夜毎に放つ劣情恋慕が
女の脳髄を犯したとして
何の不思議が有るものか
薄ら灯りの夜の夜中に
毀破れ伽藍の饐えた臭い
ぼんやり光る障子紙の
柔いざらざらの破れ目を覗けば
違交いに交わす舌先吐息は
さて什んな味がするのやら
四つん這いした明き盲が
骨身をがくがくと震わせては
然も己が目で見たかの様に
彼の世の話を恍惚顔で
可愛い稚子が生まれて来ると
白痴の夢見る夢の俣た夢
やれ虚空蔵の烏有の闇の
何を何して何とやら