混沌
百瀬朝子

夕暮れ、
伸びた影はわたしを捕まえにくる
ああ、なんてだるい

わたしの中にある
空に包まれた大地の上
鎮座する額の汗
伸ばした髪はわたしの意地です
おなかがいたいよ ねむたいよ
隣の部屋には家族の寝息しかない
ひとりの夜、
寝静まったはずの夜に ひとり
目を覚ます わたし
宇宙に迷い込んだ月のウサギ
電気の消えた部屋のテレビ
の 砂嵐が映す
青白いわたし
月を焦がすわたし
そういえば わたし、
わたしはわたしの声を知らない



自由詩 混沌 Copyright 百瀬朝子 2009-10-28 11:59:08
notebook Home