パン屋さんだ
智哉

ゆっくりゆっくりバイクを走らせた
こいつは思っているよりもスピードが出るが
そんなに早く走らなくていい
危なくないようにゆっくり走ればいい
パン屋さんは遠くない
新しい花屋を越えて八百屋も越えて
そう広くない駐車場にそっと乗り上げる
食パンがおいしいパン屋さんだ
バイクを停め、ゆっくり降り
時間をかけてヘルメットを脱ぐ
店には優しそうなおばちゃんがいつも居る

はずだった


若くキレイなお姉さんが居た
暇な時間を持て余しているらしく
彼女はレジの機械を磨いていた
不意を突かれて思考回路が停止した僕は
何故か大きなちくわパンと
生キャラメルパンなるものを買ってしまった
ジュースを2本買い450円払い
『雨が降りそうですね』
とだけお姉さんに言い店を出た
お姉さんは『そうですね』と笑い
少し首を傾ける仕草をした
レジの機械が毎日毎日
真っ黒になればいいのに


自由詩 パン屋さんだ Copyright 智哉 2009-10-28 01:09:18
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