天狗塚山頂にて
青い風

おいおい
そんなに大きな図体では
寒くて堪らんやろ

 標高千八百メートルに
 生きるコメツツジが
 そう言った

ここにはここの生き方が
あるんだからさ
まず風から身を屈めて
おいらの脇に
座り込んでごらんよ

ほらね 温かいだろ
風は当たらないけど
寒いって
贅沢言わないの

さっきまで絶景絶景って
叫んでいたじゃない
美しさには代価がいるんだからさ
あれもこれもって
欲張っちゃ駄目だよ

おいらが地に這いつくばって
こんな小っちゃな葉っぱや
枝木をしているのが
わかったやろ

小さくてもさ
ほら 立派に
紅葉はしてるし
枝木なんて芸術品だぜ
よく見てみろよ

あんたもさ
この天狗塚の眺望が
気に入ったのなら
おいらの仲間に
入るかい

厳しいけどさ
ここはいいよ 美しくて
それに生きることだけで
精一杯でさ

それ以外は
何も必要ないもの
ずっと ずっと昔に
そう教えてくれただろ

あんた 忘れたのかい


自由詩 天狗塚山頂にて Copyright 青い風 2009-10-27 18:23:25
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