この空の底に
あぐり




この空に底があるとして
それなら沈んでいるのは
きみが何万光年も前にさけんだ言葉のなきがら。
鈍色に光っているそれら

かえりたかったところ、

わたしの瞳の縁であったという仮定を夢にみた
この夜にまた、
ちいさく灯されているきみの泣いた香り

どんなにも
どんなにも
だきよせたってゆすったってうたったって
微睡みのなかで聞いた雨音ほど微かな、
その震えに気付いたって
きみが覚えるだろうかなしみを先に知ることはできず
ただただ
愛しさに浸らせた声、こえ 、こえ
ほんの少しでもたかいところ
置いていこうとしている
ゆるしてなんていえない、(いえっていうの?)

あんまりにもふかいとこに
この空の底があるとして
それならば掬い取ろうとしているのは
わたしがほんの一瞬てばなした憂鬱な温もりで
もう色も見えなくなった
もう意味も消えた
翳した左手がなにかをつかもうとしていたなら
流れる血はかなしみの蒼だったにちがいなくて
なんどでもよんでなんていえない

この空の底に
きみがいるとして






自由詩 この空の底に Copyright あぐり 2009-10-26 23:09:18
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