哀愁
黒乃 桜




ああ 値札のあの剥がしにくい事
それを綺麗に剥がすのが趣味なの

虎になれなかった猫だか
狼になりたかった羊だか

そんなのを聞きながら
消しゴムの緑の後をごみ箱へ

冬のくせに蒸し暑い部屋で
カバー被ったままの本を見る

字余りなタイトルに苦笑して
広げもせずに感想を考えた

そんなもんだろうで片付けられた固体差は
どうせ誰かと似たり寄ったり

無自覚な子供みたいに
近しい言葉を手繰り寄せて

大人のまね事を
始めてしまうのよ

そんな昨日の生き甲斐が
そんな些細な曖昧が

スカートの裾を濡らすんだ
気付かない内にぐっしょりと

慣れれば慣れるほど熱いものが
段々冷たくなってくるのね

冷めきってしまえばもう…
さて 底は何だったかしら


携帯写真+詩 哀愁 Copyright 黒乃 桜 2009-10-24 13:32:01
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