片隅のさっちゃん
mad.rabby
私は黒板に大きく書く。
「そして、私は失われた。」と。
教室がざわめく。
先生は私を睨み、教科書を握る。
哀れみにも似た視線が降る。子宮が痛い。
この場から今すぐ逃げてしまいたい。
足元がおぼつかない。視界は真っ白。
気がつけば保健室のベッド上。
「ただいま。」
もう保健室が私の教室なのだろう。
医療器具などは、私の私物みたいなものだし。
私はおもむろに棚から包帯を取り出し、保健室のドアノブに包帯を巻いた。
「ここが痛むの。」「ここが私の居場所でしょ。」「治るかな。」
様々な思いを巻く。ぐるぐる。
包帯を巻いたドアノブは、まるでその姿が本当の姿かのように、自然だった。
痛々しい白になぁれ
この世界に、私は上手に溶け込めない。
気がつけば、ひとり。
孤独を安堵するかのような、溜め息。
昨日という日に、私はいつも取り残されたままだ。
いつも今日に追い付かない。
私は今を生きれない。
これまでの人生、ずっとみんなの背中を後ろから見ていた。
そしてたぶん、これからもそうなんだろう。何となく思う。そこが私の場所で、私の限界なのかなって。
誰もが感じたことのある孤独が、私には少し違って感じる。
誰もが心のどこかにしまっている不満が、私には見つからなかった。
誰もが抱えている不安が、私には息苦しくて、堪えられそうにない。
思考を遮るような、薬品の鼻につく匂いがやけに落ち着く、そんな放課後のことでした。