きみの球体
あ。
きみから放たれた愛しい種子は
酸素に混じり肺に吸い込まれ
潤んだ空間にじわじわと溶ける
熱いため息が吐き出されたとき
そのあまりの重さに
飽和状態であったことを知る
きみの表面を覆う硝子のような球体は
少なくともぼくには完璧に見えた
爪をきゅうっと押し当てたって
きっと一筋だって傷付けることは出来ない
語り描くには言葉を知らなさすぎた
なるべく遠くにいる人に教えて欲しい
美しいという言葉以外で美しさを表す方法を
脳内に刻まれているこの光景を、感情を
正しく表現することが出来たらいいと思う
頭を垂れる一面の稲穂たちを
知らないお爺さんがカメラに収めてる
きっと彼にとっては素晴らしい風景なのだろう
稲穂を稲穂以上に見られないぼくは
感性が凍結でもしてしまっているのだろうか
ぼくの感性を動かすものは
ただ、きみの完璧な球体で
いつか誰かにやられちゃう前に
ひびを入れるとしたらぼくの手で
初めて流す血はぼくがきっかけでありたい