きみの球体
あ。

きみから放たれた愛しい種子は
酸素に混じり肺に吸い込まれ
潤んだ空間にじわじわと溶ける


熱いため息が吐き出されたとき
そのあまりの重さに
飽和状態であったことを知る


きみの表面を覆う硝子のような球体は
少なくともぼくには完璧に見えた
爪をきゅうっと押し当てたって
きっと一筋だって傷付けることは出来ない


語り描くには言葉を知らなさすぎた
なるべく遠くにいる人に教えて欲しい
美しいという言葉以外で美しさを表す方法を
脳内に刻まれているこの光景を、感情を
正しく表現することが出来たらいいと思う


頭を垂れる一面の稲穂たちを
知らないお爺さんがカメラに収めてる
きっと彼にとっては素晴らしい風景なのだろう
稲穂を稲穂以上に見られないぼくは
感性が凍結でもしてしまっているのだろうか


ぼくの感性を動かすものは
ただ、きみの完璧な球体で


いつか誰かにやられちゃう前に
ひびを入れるとしたらぼくの手で
初めて流す血はぼくがきっかけでありたい


自由詩 きみの球体 Copyright あ。 2009-10-23 21:31:24
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