春の病
古月

咲く花 咲かれぬ花 何方も花に違いはないけれど
此んなにも胸を掻き毟る様な苦しみ悲しみは一体何に故なのでしょう

季節外れの風鈴の音が向う通りの軒先で鳴るので
何とも無しに目を遣れば外は真夏と見紛う有り様で
白い日傘を差す山百合のような美しい人が往来を往きます
未だ花も散り切らず 炬燵も仕舞わぬ内だというのに
物思う侭に午睡を貪る暮らしで 暦にも愛想を尽かされます

誰彼刻になると何処からともなく遣って来ては
餌を強請る三毛も近頃は頓とご無沙汰で
如何した物かと案じていたら知らぬ間に所帯を持ったらしく
喩え貧しくとも人様には頼らぬ そんな暮らしを始めたようです

私と母との二人きりで囲む夕餉は酷く心寂しくて
花でも飾りましょうかなんて 話をしたりもするのです

姉さんの振り子時計がお嫁に行って
代わりに私が揺れるのです
ぼおん
ぼおん
ぼおん
ぼおん


自由詩 春の病 Copyright 古月 2009-10-22 01:23:21
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