氷症候群
市松 伊知郎
目が覚めた。
その足は2歩程よろめきながら冷凍庫に向かう。
氷の塊を取り出して調理用のはさみを手にして、必死で砕いた。
アパートの一室で氷を砕く音がする。
深夜3時48分。
201号室、僕の部屋だ。
部屋では、小さくなった氷を1粒2粒口にする僕。
そして安心した顔でまた眠りにつく。
15分程経った。
また氷を砕く音がする。
その音は15分間隔で朝方まで続くことになる。
本当は僕だってぐっすり安眠したいのだ。
だが、どうにも歯が痛くて目が覚める。
薬は、もう効かなかった。
きっと服用しすぎたせいだと思う。
こんな日がもう随分と続いていたから。
僕には虫歯がある。
右奥歯で親知らずの手前の歯。