氷症候群
市松 伊知郎


目が覚めた。
その足は2歩程よろめきながら冷凍庫に向かう。

氷の塊を取り出して調理用のはさみを手にして、必死で砕いた。
アパートの一室で氷を砕く音がする。


深夜3時48分。
201号室、僕の部屋だ。

部屋では、小さくなった氷を1粒2粒口にする僕。
そして安心した顔でまた眠りにつく。


15分程経った。
また氷を砕く音がする。
その音は15分間隔で朝方まで続くことになる。



本当は僕だってぐっすり安眠したいのだ。
だが、どうにも歯が痛くて目が覚める。
薬は、もう効かなかった。
きっと服用しすぎたせいだと思う。
こんな日がもう随分と続いていたから。



僕には虫歯がある。
右奥歯で親知らずの手前の歯。


自由詩 氷症候群 Copyright 市松 伊知郎 2009-10-19 00:19:14
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