ニゲラ
みつめ

彼は、ふれる 十五才のけだるい衝動にまかせて
うるんだ灰色の天体から さかさにみている
やわらかい五線譜が 痙攣する舌先でおどるのを

彼は、ひらく しろいスカートのような天蓋のもと
ひんやりと燃える舞台から さかさにみている
おのれの箱庭のいりぐちでよがる 無数の女を

さも、偉そうに。

彼は、ねむる スーパーカーにのった夢うつつ
(まきあげる塵は幾億のながれぼしとなる)
低く垂れ下がったトウキョウの空から さかさに見ている
いまだまみえぬひとびとが半狂乱になるいつか、を

そしてわたしは
誰が為 彼の為
この身を燃やし
はいになるだけ
きえるだけ

その夜、渋谷は記録的な大雨になった。


自由詩 ニゲラ Copyright みつめ 2009-10-18 21:18:37
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