蛾
三奈
進行の遅い病気みたいに
じわじわと夕暮れは迫りくる
真っ赤な空に鳴り響く危険信号
私がどんなにもがいても
「たいよう」は水平線の向こう側に
沈むでしょう
そう決まっているのなら
どうか、一刻も早くピリオドを
長ったらしい“過程”なんていらないよ
蛍光灯を消した時のように
一瞬で迫りくる闇を私に頂戴
今日も青い空の下
「たいよう」みたいな
君が笑う
君もいつかは沈むなら
陰りなど見せずに
ただ現実だけを突きつけて
一瞬で迫りくる闇を私に頂戴
できれば早いうちがいい
私が君に依存する前に
夜行性でいられるうちに
私を嫌いになる過程など見せないまま
水平線の向こうに
帰ってよ
光に慣れていない蛾の私は所詮
「たいよう」に似合う綺麗な蝶にはなれないのだから