四行詩四態 <10>
nonya
「東」
筋違いの愁いを下瞼に溜めたまま
勘違いの寝グセを直そうともせずに
東のゲートが開けば光とともに流されていく
煌めいているふりをしながら流されていく
「南」
自分の身の丈をとても小さく感じた時
意識は温かい風を遡ろうとする
汗ばんだ妄想は南に機首を向けて
ありもしない楽園を探そうとする
「西」
地平線の西に熟れ落ちた太陽は
月と星の幕間を回り込んで再生する
何処にも沈めずに途方に暮れた人は
腐敗しながら僅かな夢を発酵させる
「北」
堕ちたところから歩き出すしかない
新月の夜から始めるしかない
それでも凛と背筋だけは伸ばして
北極星だけを道しるべにして