一握
ウデラコウ

指の隙間からさらさらと 掬った砂がこぼれるのを眺めては
自分の幸せもまた この両手から零れ落ちてゆくのだろうかと思う

いつしかあたしは 臆病を体中に纏わりつかせるようになって
君のやわらかいトコが 大好きなのに
まだ酷く ソコに触れるのを躊躇してる

何も話さないことは 一番卑怯だと
君は諭すように話すけど
話した後に 全てが崩壊してしまうことを覚えたあたしは
卑怯でもいいわと 思ってしまうのよ

両手一杯に掬った砂は いつの間にか消えていて
自分の幸せもまた 気づかぬうちに失くしているのかしらって
頭の隅で思いながら

いつしかあたしは 不確定と不安定の狭間から抜け出せなくなって
君のちからづよいトコが 愛おしいのに
まだ酷く ソレを受け入れるのを躊躇してる

全て話して無防備になったら 何も纏ってないあたしを
君は優しく包んでくれるのかしら
この世の崩壊を 知ってしまったあたしは
おこがましくも 抱きしめて欲しいと 願ってしまうのよ

風が僅かに冷たくなって 波音と潮風もすこし痛くなって
そうやってまた 姫が眠りにつくから

一握りでもいいから 静かに
君との幸せを ゆっくりと集めていきたいと

両手に残った砂粒を眺めながら
波音と海風の合間に 君があたしを呼ぶ声に
音もなく 涙を流すのよ




自由詩 一握 Copyright ウデラコウ 2009-10-14 20:11:18
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