夜の意識
塔野夏子

時の棘が蒼い
硝子窓は中空で沈黙している

ゆっくりと沁みとおる夜の重量

稀薄な我の裏側に貼りつく
濃密な我

深淵で暗い薔薇がひらく
鈍色の魚が円を描いて泳ぐ

記憶の闇を抱いてざわめく木立

塔の向こうに紫の惑星が沈んでゆく
かすかなスキャットが聴こえる

流体の我を堰く
硬質な我

もはや誰の訪れも待たないひとつの椅子


自由詩 夜の意識 Copyright 塔野夏子 2009-10-13 11:22:14
notebook Home 戻る