祈り
within
ゆがんだ世界とうまくやっていくために
ひずんだ言葉に沈潜してゆく
絶望という名の回虫が腸の中で
成長している
季節はずれのハエが
安楽椅子で眠っている
年老いた神様の口元に
止まっている
忙しそうに駅の改札を
足早に通り過ぎてゆくかみさま
隣に住んでいる昼から酒臭いかみさま
学校に行かない引きこもりのかみさま
リストカットをやめられないかみさま
内定をもらえず就職浪人が決まったかみさま
母の乳房をはなさない生まれたばかりのかみさま
愛を感じることのできず出会い系にはまったかみさま
パチンコに夢中で子供を死なせてしまうかみさま
今日こそは告白しようと心に誓うかみさま
いつもは饒舌なのに
ひとりになると「死にたい」とつぶやくかみさま
今日も神様とすれちがう
この町は神様のサナトリウム
人間の仮面をかぶった神様が歩いてゆく
そして神様が神様に祈る
希望が回復することを願う
すると何かのメッセージのように
ぼくはとんぼの群れに囲まれていた