「百年樹」
月乃助
風に想う
均等な枝は垂直に ―▲
はてなく
天蓋にむけられ
無数の曲直はいまだに葉をもつ さかさまに立つロンバーディア
やせた巨人がゆれ、かしぎ 街のどの家よりも高い身に
葡萄の蔓さながら枝を空に根のように かなたへ張り巡らして、
大地に根をおろすよりも空色にそまり 虚心に触れ
陽や月の 雲の間に生きる姿それが ほんとうのありようなはず
地にあって身動きのできない身などでなく 空の精気を吸い込む、
その体の中を空洞にし、誰もが自分を大切にし中心におくのに、
身をうちから けずるように哀しく生きている
― あたしは、ふれてしまった。だから、どうしても
寓せずには…、たとえおまえが
このあたしをその腕で強く 拒絶しようとも。
100年ものとおい月日のさきに 【×100】
いまでは、老い
家並みの背を眺めるおまえに、
風はいつものように ためらいの
優しさを運んでいた
どうして、みな そうでないと、意志のない存在などと、言えるのか
さびしさは、見上げる誰もに うなずかせるはず
立ち尽くすその姿を確かめれば、
悲しさに葉を染め
まるでかせられた仕事でも
あるかのように それが
おわったなら、この街を出て
死んだように眠りつけばよい
― あたしは、おまえの墓をたてるよ、
十字の石のかたまりを、のぞむならば
だったら、
【 How much would you like to spend for it? 】
季節の終わりには、枯れ葉の身を
削り落とし、やせ衰え
骨と化すその日まで、
冬の眠りがやってくるあいだ
まだ少し 意地悪な人のざわめきが
その身を冷たく なでていようとも
さかさまに立ち ゆらぐ ▼―
巨きなロンバーディアよ、