或る街の一夜
麻生ゆり

夜の帳がおり
夕焼けが冷めて
世界が暗くなってゆく
傾きかけた三日月の
先端のあまりの鋭さが
薄い刃のようで
闇をちぎっている
今宵もまた新しい夜が誕生したのだ
やがて月はビル群に紛れながら地平線に姿を隠し
都会の闇はなけなしの星で飾られる
そんな当たり前な天のもと
地上を見ると
イミテーションの色とりどりの輝く点があって
夜の街が飽きられることはない
また赤いともし火と白いともし火とが
ところどころ線となって道を作っている
そのそれぞれはたった独りのタクシーの群れなのだ
闇夜が陽光によって追い払われるまで
彼らは蠢く蟻のごと
独り当てもなく走り続ける
その後夜は朝焼けと共に姿を消し
その主役をさも当然とばかりに青空に託す
毎日決められたようにリフレインしながら
こうして今日が生まれるのだ


自由詩 或る街の一夜 Copyright 麻生ゆり 2009-10-10 23:13:04
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