ボリュームコントロール
葛西曹達

最近 喉の調子が
めっぽうよろしくないのは
僕の満足いく唄を
歌わせてあげていないから

天に向かって放つ
祈りに似たただのワガママ
地から離れない二本足
踏みしめてるのに不安定

最近 声のトーンが
もっぱら低調なのは
僕の満足する色を
選ばせてあげていないから

誰かに届くように
叫んでるただのエゴイズム
振り回す細い両腕
むなしく空を切るだけ

ここに響いているのは
ちっぽけでさびれた唄だよ
ボリュームコントロールで
君には聴こえるはずがない

ホントに話したいことは
結局濁したまんまで
気を引くためにいつも
ぼそっと何かをつぶやく

なぜこの場所に立っていたかも
思い出せないまんま
表現する難しさに
キリキリと捻じられるようだ

「どこでだって唄える」と
昔の僕が言っていた
戯言なのか真実か
今の僕にはわからない

どうしたらいいのか
わからない
何を信じればいいのか
わからない

ここに響いているのは
かすれてくたびれた唄だよ
ボリュームコントロールも
もう失ってしまった

すべてを聴かれるのは
恐ろしくて切なくて
とっても恥ずかしいことで
それでもまだ唄っていて

なぜこの場所に立っていたのか
思い出せたとしたって
表現する曖昧さに
僕は打ち克てないのかも

それでもただ唄う
ちっぽけでさびれていても
かすれてくたびれていても
これが僕だけの唄だから

僕だけに響くボリュームで


自由詩 ボリュームコントロール Copyright 葛西曹達 2009-10-10 14:04:32
notebook Home