藍色
しべ

石材屋の看板が光る
とぎ汁を固めたような色だ
熱帯魚みたいにきれいで
とても暗い

郵便受が口を閉ざす
瑞々しく歪んだ切り口

手のひらを右に傾けたら
パンクの修理に屈む男の背が
昔の冷蔵庫の中みたいにつるつるした影を纏って
精を出す

次は
南東に昆虫のようなセスナの音
遠い とても遠い

T字の突き当たりは
街路灯とボスの自販機
ビーン…と小さく
いま、埃がサラサラ焦げて灯りがついた

道は靴底の音を拾ってしまう
海のような曇った日に
錆で描かれた小雨が
鳥の囀りを産む

軋む空を連れて無言になる
暮れなずむ事なく手招きする気もない
格子戸の中で人が揺らめけば
怖くなって小走りに

夜だ


自由詩 藍色 Copyright しべ 2009-10-10 06:49:11
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