やまぶどう
yo-yo

きょう
夕やけを見ていたら 空が
あかい舌をだした


飛行機にのって
船にのって
汽車にのって
ここまで来たんだよ と彼女はいった


空と海と陸地と
そんなにいろんな乗り物にのって
どれほど遠いところから来たんだろう
あの山よりもずっと
空よりもずっと


ずっと 遠いんだよ
風に髪がゆれると
いい匂いがする
はじめて聞く めずらしい言葉で
ぼくが知らないことを
いっぱいしゃべった
だけど彼女は
やまぶどうを知らなかった


ふかい藪にかくしてある
ぼくの秘密の果実
むらさき色の小さな粒を 彼女の
貝がらのような掌にこぼす
ほら食べてみな
すこし甘くて すこし酸っぱい
たねを吐きだすと
くちびるがあかく染まる


ちいさな鬼になって
むらさき色の舌がわらった


たったそれだけの秋 を残して
汽車にのって
船にのって
飛行機にのって
ちいさな鬼は 帰っていった







自由詩 やまぶどう Copyright yo-yo 2009-10-09 06:11:12
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