弟
チアーヌ
夢で見る弟を追いかけてしまう
弟は時折現れる
でも触れることはできない
わたしがピアノとフルートの伴奏で
歌を歌った夜
弟は会場の一番後ろの席に座り
わたしを見ていた
「弟だ」
と思った
演奏が終わったとたん追いかけたけど
もう弟はいなかった
あわてて会場を出て
必死で息を切らし
なりふりかまわず追いかけたのに
どこを探しても弟はいなくて
もうだめだと思った
誰もいないしんとしたロビーで
わたしは床に伏して泣いた
大きな声を上げて泣いた
わたしには弟はいない
そんなことはわかってる
でも追いかけてしまう
弟はどこにも
いないのに
自由詩
弟
Copyright
チアーヌ
2004-09-14 12:17:44