無題
高橋魚
ひっそりと音を立てず
忍者のように
背後を歩いてゆく
ぼくはそれを見ることが出来ないし、気付くこともない
知ってはいるのだけれど
砂を掬い、放り投げる、
風が分散させる、
見えなくなってしまう。
遠くの浜辺では
波と女の子がじゃれ合っている
遠くから訪れた白い訪問者に
女の子はなつかしさを覚えているのかもしれない
でもどこかそれは触れてはいけないものだと
彼女は感じているのだろう
気付くと黄色い光は死んで、赤い光しか届かなくなっていた
手裏剣がこうして
背後からときどき飛んでくる
深くは刺さらないのだけれど
彼女と
話してみたい
ああ、でも
そこはここではないんだね
少しずつぼくは
場所を間違える
ぼくの浜辺にも多くの白い訪問者が向こうから訪れる
ぼくは
それらを受けとめようとする
しかし
何も残らない、消えていってしまう
ぼくが抱いているのは
ぼくなのだ