クスノキに逢うための習作(1)
長岡瞬


シタタルような
緑の自然はいりません。
何百年、あるいは何千年も立ちつづける
そんな樹などはいりません。


青空、と呼ばれた少年を
ぼくは知っています。
ぼくはその子を思い出すたび
唾が口の中いっぱいに溜まります。
一切の
雲は
いりません。


コトバはいりません。
でも、チンモクは
いりません。


鼓膜はいりません。
霧のかかる寒いやまみちを
なぜ、何度も何度も
自動で往復するのか。
いままで
好んで被っていた
黒い帽子はいりません。


蟻と
母はいりません。
黒板の
あの平面ような
父をください。


自由詩 クスノキに逢うための習作(1) Copyright 長岡瞬 2009-10-08 00:39:01
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