オーロラ
ゆえづ


夜更かしの羊飼いは大層身軽で
わたしの寝室へ夢のように舞い降りては
夜毎数字をひっくり返す

空がまるで海なのよ


わたしはちぎれながら泳ぐ
よれた真夜中を
雨に打たれるカラスのように
剥がれ飛んだ色とりどりの鱗片が
黒ラシャの敷布に堆積する
深い穴底にきらめいた泡沫のいのちを
あなたはその確かな両腕に
ひとひらひとひらくるんでくれた
そしてわたしのなかへ
じわと呼び起こすたゆたいのうた


ひしゃげた深海魚さん

あなたはからだいっぱいにわたしを抱いて
忘れた呼吸を数えようと言った
お空に雲が迎えにくるまでね

お空に雲が迎えにくるまでね


ちぢれた髪の柔らかな湿り気が
よどんだ声をさらってゆく
わたしが待っていた夜明けはすでに
まっさらな陽の下で死んでいる




水面をごらん
羊たちが走っているよ



自由詩 オーロラ Copyright ゆえづ 2009-10-07 17:57:15
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