午後二時の静寂
小林 柳


うつろな午後
昼食を終え
同じような犯罪を
同じように報道するワイドショーを消し
読んでしまった新聞を 畳みなおす
新陳代謝のように続く 不要な情報のループ
その繰り返しの外
離れた形而上の場所
そこに僕は座っている

表は静まり返っていて
車は通らず 人の話し声もない
猫はけんかをせず 犬は吠えない
蝉はとっくに去ってしまっていた
洗面所のそばでは
乾燥機が四回鳴いて消えた

時計の針は進まず
午後二時の静寂は擦り減らない
どうしようもなく寝ころんで
天井の染みや 壁の傷を眺める
何も思いだせないままに
静けさを体内に感じる
夕方の切なさを恐れて
午前の希望にすがるように
僕は午後二時に留まっている

時計の針と共に 数分歩んでは
僕は静寂へと戻り
掲げた右手の
いくつもの線を辿っては道に迷う
電灯へ向かって伸びるその手は
光をつかもうとしているようにも見え
まるで 先へ進めない僕だけが
午後二時の静寂と
少し窪んだ右手の平の上に
置いていかれるような気がしている



自由詩 午後二時の静寂 Copyright 小林 柳 2009-10-06 14:17:56
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