雨の下釣り人は独り
北村 守通

私はニンゲンであったから
冷たい雨の下で
蛙たちと共に飛び跳ねることはない

私はニンゲンであったから
蛙たちは
安全な距離を保とうと必死になる
沼に飛び込む
水面に波紋がたつ
大きな音がして
水中から波紋がたつ

私はニンゲンであったから
生きた蛙の味を知らない
私はニンゲンであったから
沼を恐れることはない
正確に言えば
沼に食われて
消化液に身を焼かれる
そのいつ終わるとも知れない痛みに
恐れをいだくことはない

私はニンゲンであったから
必ずしも
自分で食うものを捕獲する必要はない
食うためだけに
捕獲する必要はない

私はニンゲンであったから
子孫を残すために
戦う必要はないし
様々な必然を
理屈をつけて拒否することが出来る



私は
いつのころからか
ニンゲンであったから
孤独であった


自由詩 雨の下釣り人は独り Copyright 北村 守通 2009-10-06 03:55:23
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