サラテリ
ゆえづ
籠の中の小鳥が声高に鳴く
開け放たれた窓からそよぐ風に喜んで
庭先で君はひとり楽しげに
プランターのおじぎ草を突いていた
鼻腔を突くのは蒸せた花の香り
ざざざと風は水路を走る
千切られて泳ぐあの夕焼け雲のよう
過ぎし日々へと抜けてゆくうたを
一片くわえて私は目をつむる
しらじらと月明かりは
ひとりぼっちの部屋を浮き彫りにして
忘れたはずの名を床埃になぞる
さよなら撫で下ろす指先で
その輪郭を暈し
冷たい涙を私は掬うんだ
今夜も泣きながら柱時計のネジを巻いた
君の細い首を締めるように巻いた
耳鳴りは暗い壁を駆け上がり
赤い電球が遠のいてゆく
深海にぽつぽつと降り積もるのは
私という名の残骸である
古びた日記帖が燃えている
さよならさよなら
はらりはらりと舞い落ちてゆく煤と
星を見ていたんだ
赤く燃えさかる大きな星を
ひとり海底に寝そべったまま
屋根裏に隠した純粋あれまでも
焼き捨てておくべきだったのか
目覚めればカーテンの向こう
雷鳴の透けた空で雨は美しく死んでいる