博愛主義
八月のさかな


夕闇のなかでふるえながら
どれほどの
自分の亡骸をみおくったろう

優しいばかりでは生きてゆけないこと
たくさんの人たちに教えられて
それでも
世界をいとおしむやりかたを
変えられなくて

夜の雨はすき、
なんだかこころが静かになるから
雨の朝はきらい、
どこへいっても味方なんていないような気がするから

わたしはどこにいきたいんだろう
ここは東京のまんなかで
あたたかい部屋があって
ひとりぼっちで
昨夜もまた、もう一体のわたしを見送ったあとで

誰に会いたいんだろう
何もかも誰もかも愛していたつもりだったのに
世界を敵にまわしてしまったみたいな寂しさで

なのにわたしはきっと、今夜も
愛する、
愛する誰かと
ともにわらい、ともに泣いて
きっとわたしをも一度みおくる






自由詩 博愛主義 Copyright 八月のさかな 2009-10-03 11:57:09
notebook Home