October hill/神無月
月乃助



願いながら、息つぎあがっていく

街をみおろす丘がある

樫の木は、そそり立つそこで、
長いときを枝にのばしながら
すこしもためらいをみせぬ
自然とよぶ惰性などでない意志で
腕をせいいっぱい伸ばし生き抜いている

誰にもきらわれないように
あたしは、願いの理由をさがしながら、
ひどくつまらないと
わらいだし
街をみおろし
見上げる

わずらう皺を刻んだ幹の月日は、
密な樹齢の年輪に 神々しく
巨きくなった

ひとつのクラスの
子ども達が みな
ぶらさがれるほどの枝のひろがりに、
空と緑の境で けわしくたっている

137億年のむかしより
神たちのいなくなったこの月
代わりに、あたしの願いに
すこしも蔑まず
耳をかしてくれるのか、
神のようにあかしをみせるのか

教会でなければなおさら
だれもが、平気に歩き過ぎるのに
願いを首にぶらさげて
あたしは、たちすくんでいる

音を立てる
実生はおまえの受精子
気にもせず
トクン、トクン   ○●○●
秋のみちにいたいほどの
次の世への鼓動を響かせ、

車の音にも人の姿にも
ただ、揚々
わずかにかしぐ がっしりとした体から
丘の上 威厳に具眼をのぞかせ
昔、孤児院だった煉瓦の
いまはシニアー・ハウスが
ぽつんと、おまえに
よりかかるように話しかけている

みじかい 人の生きる様を見つめては、
ため息をおとし、願いを聞いてくれる
旧い街の 巨きな木よ、








自由詩 October hill/神無月 Copyright 月乃助 2009-10-03 02:08:18
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