Infinity
小林 柳



空は遥か遠くまで透き通って
あの日よりもずっと現実的です
立ち並ぶ家や 生い茂る緑が
白い光を乱反射しています
眩しいけれど
それでも空を見上げたままでいます
あすこにいる野良猫も じっと動かぬままでしょう


こんな日には
黒く輝く宇宙が見通せます
惑星がいくつも漂う 無限のふるさとが

昨日のぬけがらのような濁った月は
青いクリスタルの端に混じった
場違いな不純物のようです
月はあくまで 控え目でいます


不完全を含んだ完全の中で
何が起きても平気だと
心が開いていきます
この広い空と 溶け合っていくのです
はだかにされて 溶けていくのです


あすこに透ける 宇宙からの風が
優しく通り過ぎていきます
去り際 風は
これから誰かを連れていくよ と
そう言いました

きっと誰かが あの風にさらわれてしまうような
そんな気がしてなりません
予定のない誰かを
どこか見知らぬ海岸へと
あの柔らかな無関心が 連れていくのです
その場所からは
昨日が消えていった あの無限へと
流されていけることでしょう



自由詩 Infinity Copyright 小林 柳 2009-10-03 01:24:19
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