確証のないこうふくのなかで
ねことら
はんぶん機械のようなものだ
*
コーヒーの無機的な味
オーソドックスに平日の朝をまとめあげる
適切な手段と手続きに従って、予定された課題を消化する
抗体がいまのところ不全であるために
不純物のまじったかんじょうが、時折
雑踏で、カフェテラスで、オフィスのエレベーターで、
原色の蜃気楼として脳内でたちあがり
その都度、もろい外殻の
みしみし破砕されていくおとを聞く
どこか遠くで聞いている
喜遊曲のように聞いている
*
尖った鉛筆で線描されたような街並みに
音も匂いも組み込まれていく
アーケードに既に人通りはなく
偶に青白く発光する魂のようなものが通り過ぎるので
既視感からふりかえっても
誰も初めから存在していない
不安定な距離感を保ち、ぼくらは
隣の道をあるいている
*
セカイ、その語彙そのものに含まれる誤謬
空白は無意識のうちに
ここにもそこにも拡散していく
一部分でしかないぼくはセカイから疎外される
疎外された魂がほたるのようにあつまり
それを遠くから見ている
さびしいものとして見ている
*
はんぶん機械のようなものだ
はんぶんが、はんぶんに
はんぶんの、さらにはんぶんが
またはんぶんに、折りたたまれ
手続きは省略され、平日の夜は
予定調和の波に均されていく
ぼくらは仄温い
しこりのような希望をかかえ
また再び明日へとわたりはじめる
確証のないこうふくのなかで
曖昧に溶けながらいきている