確証のないこうふくのなかで
ねことら



はんぶん機械のようなものだ





コーヒーの無機的な味
オーソドックスに平日の朝をまとめあげる
適切な手段と手続きに従って、予定された課題を消化する

抗体がいまのところ不全であるために
不純物のまじったかんじょうが、時折
雑踏で、カフェテラスで、オフィスのエレベーターで、
原色の蜃気楼として脳内でたちあがり
その都度、もろい外殻の
みしみし破砕されていくおとを聞く
どこか遠くで聞いている
喜遊曲のように聞いている





尖った鉛筆で線描されたような街並みに
音も匂いも組み込まれていく
アーケードに既に人通りはなく
偶に青白く発光する魂のようなものが通り過ぎるので
既視感からふりかえっても
誰も初めから存在していない

不安定な距離感を保ち、ぼくらは
隣の道をあるいている





セカイ、その語彙そのものに含まれる誤謬
空白は無意識のうちに
ここにもそこにも拡散していく
一部分でしかないぼくはセカイから疎外される
疎外された魂がほたるのようにあつまり
それを遠くから見ている
さびしいものとして見ている





はんぶん機械のようなものだ
はんぶんが、はんぶんに
はんぶんの、さらにはんぶんが
またはんぶんに、折りたたまれ
手続きは省略され、平日の夜は
予定調和の波に均されていく


ぼくらは仄温い
しこりのような希望をかかえ
また再び明日へとわたりはじめる


確証のないこうふくのなかで
曖昧に溶けながらいきている






自由詩 確証のないこうふくのなかで Copyright ねことら 2009-10-02 14:18:06
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