赤い羽音共同募金
服部 剛
「 赤イ羽根共同募金ノ御協力、オ願イイタシマス 」
後輩ふたりを左右に、僕はまん中で募金箱を首から下げて
通り過ぎゆく人々の誰かの胸へ、ひとつの声が届くよう
道化のふりした明るさで、一心に僕は叫ぶ。
「 赤イ羽根共同募金ノ御協力、オ願イイタシマス 」
右側に、無数の赤い羽根を手に持て余しながら
不器用に懸命な声を出す、眼鏡をかけたH君
(いいねぇいいねぇ、その感じ・・・)
左側には、旗を握って立っているW君
弁慶みたいに逞しいけど、声はちょっと小さいね
(もしも疲れてしまったら、時にはちょっくら休もうや・・・)
「 赤イ羽根共同募金ノ御協力、オ願イイタシマス 」
僕等3人のコーラスが、世界の何処にも無いような
独自のリズムで
地下鉄・戸塚駅構内の改札口から通路迄、響き渡ってゆく
遠くで切符を1枚買ったおばちゃんが
流れる人の隙間からこちらを見ては微笑んで
ゆっくり、歩いて来る。
がま口から取り出した
丸い銀貨を1枚
「おつかれさまねぇ・・・」
ちゃりん
「ありがとうございます」
僕等3人の声を重ねたコーラスが
日常の虚空を、つらぬいた