離陸
nonya


内耳のような誘導路をすり抜けた時
滲んだ涙は悲しいせいじゃない
出口はずっと前から知っていた
いつも見えないふりをしていただけだから

背筋のような滑走路を走り出した時
浮かんだ笑みは嬉しいせいじゃない
飛び方はずっと前から知っていた
ただ空のあてどなさが怖かっただけだから

モラトリアムの粘っこい滑走路から
車輪が剥がれる瞬間の痛みは
懐かしさに毛が生えた程度

震える翼で風を掴み終えてから
車輪と一緒に折りたたんだのは
出来たてのホヤホヤの覚悟



自由詩 離陸 Copyright nonya 2009-10-01 18:00:15
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