慢性夢疾患
中原 那由多
幸せの疑似体験をした翌朝
依然として闘病生活の真っ只中で
生理的欲求をめいいっぱいに吐き出した
軽い貧血に対して冷静な自分を
少しばかり嫌になる
嫌いなものを嫌いと言えて
好きなものを好きとは言えない
病と仲良くしていかないと
辛いものしか残らない、なんて
今日びそんなの流行らないよ
強がることが恥ずかしくて
病室の窓から曇り空を見上げる
白い壁に赤いペンキをぶちまけさせようと
半笑いで誘惑するドクターを我慢して
左耳のイヤホンに集中した
今ある立場に慣れなくて
やり場のない苦悩を右ポケットに押し込んだ
行き止まりにぶつかるまで
逃げていればいいだろうと
一本道をひたすら走った
都合のいい噂に息を殺して
懐疑心を握り締めたまま
またしても、面会時間を過ぎてしまった