慢性夢疾患
中原 那由多

幸せの疑似体験をした翌朝
依然として闘病生活の真っ只中で
生理的欲求をめいいっぱいに吐き出した
軽い貧血に対して冷静な自分を
少しばかり嫌になる


嫌いなものを嫌いと言えて
好きなものを好きとは言えない
病と仲良くしていかないと
辛いものしか残らない、なんて
今日びそんなの流行らないよ


強がることが恥ずかしくて
病室の窓から曇り空を見上げる
白い壁に赤いペンキをぶちまけさせようと
半笑いで誘惑するドクターを我慢して
左耳のイヤホンに集中した
今ある立場に慣れなくて
やり場のない苦悩を右ポケットに押し込んだ


行き止まりにぶつかるまで
逃げていればいいだろうと
一本道をひたすら走った
都合のいい噂に息を殺して
懐疑心を握り締めたまま

またしても、面会時間を過ぎてしまった



自由詩 慢性夢疾患 Copyright 中原 那由多 2009-10-01 17:32:54
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