ゴヤブラック
ゆえづ
判定窓がニヤリと陰性を示したので
私は軽やかに手を振り
妊娠検査薬をゴミ箱に投げ入れた
奇形の子を孕むつもりはないけれど
薬漬けの身体で抱かれることに
何のためらいもないんだ
不意にからえずく
のたうち回るほどむず痒い
膝小僧みたいに擦れたこの畳と
かさかさ笑いながら私は
血塊が下りる感覚を待っている
ああ 無駄に生きた
チューブからひり出す由々しき黒が
画布の上で張りついた
艶やかにうねる水飴めいたため息と
あんたの頬に力強く刻まれた
その皺そっくりに渇き
死んだ
そうして私の子宮は死んだんだ
本日ハ晴天ナリ
本日ハ晴天ナリ
向かいの鶏が鳴いた
私は明るいベッドに横たわったまま
ぼんやりと眺めていた
壁のひび割れに塗り込められていくモルタルを
左官屋の手つきは軽やかだ