「優しいいばしょ」
月乃助
おまえは信じないのかい?
見上げれば、オウクがたずねていた
答えかえせずに、空から煉瓦の雨がふってきそうで
恐ろしく、そいつの堅固そうな樹の下に入ったままだった
ひとりと一本の目の前を ?
だれもが平気に行き交うのは
あきらめの顔をみせながら、歩いているから、
そうにきまってる
おまえさんは、さ
神聖なものたちに願いをかけようとも、 】・【
聞いてもらえる、その心服にいないのがわかってるなら、
なおのこと、車にのりながらドアをあけるのがこわいのさ
だから、しっかりとハンドルにしがみつきながら
生きてきたのだろう
― ドアなど何のためにあけるというのか( ? )
時代の問題だろうね、
むかしは、そんなに複雑ではなかったものさ
それをどうしてか、みながかきまわしてしまったからね、
優しい人間のいる場所など、少しもありはしない
それだけのこと、だから、人の願いはどんどんとふえていった
そうだろう、
おまえさんは、むずかしく考えすぎるのではないのかい?
すべて、単純化させてみれば、たったひとつの実から始まり
成長をし、大きな枝を伸ばすようになる Ж±
そんなものと変わりはないはず
小石・コンクリート・アスファルト・煉瓦
どんな種類の雨が降ろうと関係ない
それさえも、わからないというのなら、もう
お手あげだろうけどね
俺はオウクの無表情が、それが鬱陶しかった
周りはにぎやかな 無関心をよそおっていやがるし
木の下から出る頃合いだろうに、ぐずぐずと
いつまでも 青い空とこの街をながめていた
ここは、すくなくとも人間がいられる場所
らしかったし、
いらないものばかり ∵
どんな雨が落ちてきてもよいように、
それを知ってか、女がくれた
毛糸の帽子をかぶり、何かあったときのために
かばんには、安いシェリーをいつも持っていよう
緊急時の優しさが、それを必要とするときに
どんなときでも笑ってくれる
女にさしだし一緒にのむことだって 【】¨
いまは、ゆるされるのかもしれない
ほら、あそこにもいまさっき、
オウクの実生が、コツンとコインを堕としていった
その代償といったら、
まったく、コノヨノナカハ
コノトコロ ドウシタッテイウノダロウ、
コンナニナルマエニ ダレカ
トメラレナカッタ
ノ カイ