九十九神
ルナ

夏の暑い昼下り
溶けて落ちたアイスクリーム
ちっぽけな黒蟻が群がる
うじゃうじゃと
小刻みにうごめく黒い固まりは
ただただ気味が悪いだけだった

ほたるこい
の歌のように
自分の水は甘いと誘う
その行為は人間のエゴであり
悲しいものだが
悲しさ故の人間の行為なのだろう

人間は悲しい生きものだから
優しさに触れたくなる
家族愛、隣人愛
そんな言葉に触れては自分と重ね
または昔の
少し美化された面影の人と重ね
そうやって共感して群がってくる
特に否定もしないが
肯定などもちろんしない

愛情と憎しみは表裏一体であり
命懸けで愛した人に裏切られるほど
命を捨ててでも殺したくなる
それも人間の弱さであり
傷つき傷つけられて裏切られ
それでも愛情を持てるのならば
それは無償の愛と呼ばれるものであり
誰でも持てるものでない

神がその境地に立てるというならば
何故に神は天罰を下すのか
影からか上からか
人間を見下し
自らの姿を隠して行うその行為は
卑怯者で
愚者の行いである
弱い人間が祭り上げたもの
そんなものは神ではない

本当の神
それは多分とても身近にいて
何もせず
ただ見守るだけなのだろう



自由詩 九十九神 Copyright ルナ 2009-09-30 07:57:17
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