帰省
西天 龍
慰めの言葉をかき集めるつもりの帰省で
何のことはない
旧い友人たちを精一杯なぐさめる酒を飲んだ
思えば卒業をきっかけに
故郷を彼らに押し付けて
都会へ来た俺はまだ幸せものだったのかもしれない
夢が成就する見込みなど
まるで見当たらないシャッターばかりの街で
それでも夢を大切に抱え込み
夢を捨てきれずにいる友よ
心の天秤ばかり軋ませて
狭い街ゆえに
恫喝と韜晦の狭間をすり抜けていると嘆く友よ
羅針盤の針、力任せに回して
どこにでも行ける、何にでもなれると
笑いあった日々を覚えているかい?
あの時誰かが「神よ」と言った
われら心優しき航海者たちに恵み深き風を与え給え、と
そんな芝居じみた台詞を
皆、押し黙って聞いていたっけ
どんなに酔っ払っても
時が来れば待つ人のもとへ帰り始める友よ
さようなら、心優しき航海者たち
俺の休暇も、もう終りだ
あの時代がどんなに懐かしくても
アンコールの拍手はもういらない