胸の厚さも
草野大悟

手のぬくもりも
胸の厚さも
すっかり覚えてしまった

わたしの中には
いつも兄ちゃんの声がある
兄ちゃんの呼吸がある



むかしむかし
あるところに ひとりの少年が
おりました。
少年は空が大好きで
いつも だまって 見つめておりました。
少年がいくら
お話ししても
空は一言も口をきいては
くれませんでした。

ある日 少年が
いつものように
窓にもたれながら
星の輝く空を見つめていた
その時
戸を叩く音がきこえてきます
トン トン・・・トン トン・・・

少年は
そっと 戸に近づいてゆきました
そして、そっと戸を開いてみましたが
だれもみえません。
少年は 不思議そうな顔をして
もう一度あたりを見まわしました。
でも、やはり、だれも
みえませんでした。

ねぇ、みなさん
だれだったとか思いますか?
少年を訪ねてきたのは。

みずいろのドレスを着た空の精ならば・・・・
お昼の空は
みずいろでしょう
輝くみずいろでしょう

空の精は
少年に
みずいろのドレスを
プレゼントしたんですって。

少年は
オレンジ色のドレスを着た
空の精も 好きだんったんです。

もちろん
キラキラ輝く星を
アクセサリーにした黒いドレスを着た
空の精も。

それでも
少年は
やはり
プレゼントにもらった
みずいろのドレスを着た
空の精が いちば〜ん
好きだったということです。

おしまい。

セザンヌの風景
アイロンですこしは
しわ のびたよ。


自由詩 胸の厚さも Copyright 草野大悟 2009-09-29 23:18:20
notebook Home