入賞トロフィー
モチヅキゼロ

手が汚れたら手を洗うのと同じように、君は身の回りのものを捨てる。
私はそれと同時に、美容院で夏に傷んだ毛先をケアしてもらう、
ある人はカラオケに行くのかもしれない、
またある人は衝動買いをするのかもしれない。

君の身の回りにあるものは、何もない。
数日前まで、ぬいぐるみと卒業アルバムと小中高の絵のコンクールに入賞したたくさんのトロフィー、
あとは覚えていない。

捨てるものの比率が多いだけだよ、君は言う。
多すぎだ、明らかに、
携帯電話がぴかぴか光って、うなった、
これも捨てないとと聞いたのは、秘密だ。

自分の部屋を見た瞬間、それはまるで、真っ白なハンカチに色のついた絵具をたらして、徐々に赤く染まるように、じわじわと思い始めた。
嫉妬、
君は過去になんの執着もしていない、
私の部屋は少ない銀色に光る入賞トロフィーに賞状、捨てるのがおしい雑誌の数々、アドレス、
私は君に嫉妬していた。

君の部屋に行くと、数日前まであったものすべてなくなっていた。
いや、君自体いなくなった、
だれだっけ君って、
存在までなくなってしまった。

少しだけ閉め忘れたカーテンの隙間から、日光が帯の様に伸びていてトロフィーがきらきらと光っていたことは印象的だった。



自由詩 入賞トロフィー Copyright モチヅキゼロ 2009-09-29 23:13:10
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